抗ヒスタミン薬の漫然処方に警鐘。大久保教授に聞くVol.2
日本医科大学耳鼻咽喉科主任教授の大久保公裕氏は、花粉症に伴うアレルギー性鼻炎(AR)において
「抗ヒスタミン薬は必須」と指摘するが、だからこそ漫然とした処方に陥りがちと警鐘を鳴らす。
(聞き手・まとめ:m3.com編集部、森圭吾)
◎ プライマリ・ケア医がどこまで適切に出来るか
抗ヒスタミン薬は必須であるけれど、例えば喘息がある方には抗ロイコトリエン薬が必須になることもあります。また、花粉症では鼻閉が圧倒的に強く夜眠れない方もいっぱいいる。そうした方々が抗ヒスタミン薬だけでいいのかと言えば、決してそんなことはない。不眠症になるまで悩まされているのであれば、鼻閉を取り除かなければならない。
非専門医、非耳鼻科医と言うことで、取り敢えず抗ヒスタミン薬を出して効かなければ紹介するという形もありますが、やはり多くの国民が悩まされる花粉症であり、それに伴う症状なので、プライマリ・ケア医がまずどこまで適切に対応できるか、と言うことが大切だと思います。
現実は、まだまだガイドラインに基づいてうまく患者の抱える問題を掘り起こせていない。抗ヒスタミン薬を否定する訳ではありませんが、あまりに偏りすぎているのではないかという印象も受けるのです。
-----花粉症に伴うARの症状でも、臨床診断は難しいとの声がありますが------
それは鼻閉などの鼻症状を正しく理解していないと言えるかもしれません。スギ花粉症であれば、飛散シーズンの2~4月に症状が毎年出ているのであれば、まず花粉症と考えるべきです。その患者さんの中でも、毎年同じ薬を飲んで満足できている人であれば、それでいいと思います。医療経済的にも最小量の薬剤でコントロールできているのですから。軽症でコントロールが良好であれば、OTC医薬品で試してもらって良いわけですよ。
医師に求められるのは、OTC医薬品でコントロールが難しい人や、実は現状の治療には満足できていない人を適切な診察で掘り起こす技術です。安易に出した抗ヒスタミン薬で対応できているような患者さんはそのうち診察室からいなくなると思った方が良い。「花粉症の薬を下さい」と求められ、易々と処方する。そんなのは医療とは言えません。
◎いずれ「医療機関にまで行く必要は無い」とも
漫然と抗ヒスタミン薬を飲んでいる人は「医療機関にまで行く必要は無い」となってしまう可能性も出てきます。OTC医薬品との棲み分けが出来ていない現状では、医師の間でも花粉症に対する診察が正しく理解されていないと言えるでしょう。決してドラッグストアレベルの医療に甘んじたくないのであれば、患者さんが花粉症だと言っても、スギ花粉だけなのか、ダニは関与していないか、通年性を合併していないか、鼻閉はどの程度あるのか、喘息の合併はないのか、他のアレルギーがないかなど、聞くことがたくさんあると気づくべきです。
医師として求められるのは、スイッチOTC医薬品になるような簡単な薬剤を処方することではなく、その人を正しく理解し、症状に合った薬剤をどう処方できるか、個々に考えて処方できているかどうかだと思います。(つづく)
投稿日:2019年3月16日|カテゴリ:トピックス